IEF 2010 レポート  XrayN選手


IEF 2010 レポート

XrayN

初日の予定は成田国際空港から北京へと移動し、現地のホテルで一泊するだけである。関西住まいのため関西国際空港から出発するSoniaを除いた我々Vae Victisのメンバーは上野に14時に集合した。そのまま成田エクスプレスに乗り込み15時には成田国際空港に到着。その後、関東組みを引率する松井氏とWarcraft3日本代表の一人であるNemuke氏と合流。充分なゆとりを持って税関くぐり、搭乗ゲートへと向かった。余談だが、成田空港の搭乗ゲート付近で食べた1000円のカレーは今まで私が食べた様々なカレーの中で最も不味かった。Twistに至っては一口で食べるのをやめてしまったほどである。やはり税関を通る前に腹ごしらえはするべきだ。北京に到着し、ホテルについたのは深夜の1時を回った頃だった。機内で惰眠をむさぼっていたため食事を逃してしまった私は、ホテルのルームサービスで腹を満たして次の日に供えた。

二日目の予定は北京から大会が開かれる武漢へ飛行機で向かい、選手村(大会運営側が出場するプレイヤーのために用意したホテルの事を指す)へ移動する事だ。初日同様に、二日目も移動のみの予定のため11時起床とゆとりある朝を迎え、ホテルの食堂で昼飯を済ましてから14時のフライトのため北京国際空港へと向かった。北京から武漢まで凡そ2時間前後のフライトは、私が寝ている間に終わっていた。武漢の空港に到着すると、今回を含め今までのIEFに日本代表が出場するために尽力を尽くしてくださった陳氏とIEF2010の運営を手助けするボランティアの方々が暖かく迎えてくれた。バスは空港から1時間ほどかけて選手村に到着。ホテルのチェックインをすましてすぐにホテルで用意されている晩飯を頂くことにした。晩餐には日本が一番乗りなのか他の国の選手達は見当たらず、日本代表と運営スタッフのみの参加となった。私は中国には過去に二度カウンターストライクの大会に出場するために訪れているが、その度に驚くほど美味で見たことも聞いたこともない料理を食べているので、こんな事を言うと「お前は何をしにいったんだ」と思われるかもしれないが、今回も食事にはとても期待していた。今回もレシピを訊いて日本で再現したくなるぐらいの旨い料理に何度も出会えて幸せだった。中国の食事はなんとも大衆的で、日本や欧米のように個別に食事が出てこず大円のテーブルの上に様々な料理を置いて自分の皿に食べたい料理をよそっていくというある種のバイキング形式である。食いしん坊で欲張りな私個人としては様々な料理を満喫できるのでかなり好みな様式だ。一緒に食事をしたスタッフの中には武漢に到着したこの日から最終日までお世話になる張氏がいた。彼は若干20歳の大学生で200人近くいるボランティアメンバーのリーダーである。政府主導で行われるIEFにボランティアとして運営に関わろうとするものは多く、希望者を全員参加させる膨大な数になるため大学の成績が良い者順に採用されるそうだ。無論その中のリーダーともなると相当優秀なはずである。これは後述するつもりだが、最終日の前の晩には彼と尖閣諸島の問題を切り口に日中の外交問題やアジア情勢、そして日本人と中国人との歴史見解の相違などについて話し合う機会があり、本当に貴重で価値のある経験ができた。なんにせよ我々日本代表を担当した張氏は、正直日本語が堪能とはとてもいえなかったが我々のために奔走してもらい、貴重な話や意見を聴かせてもらった事を心から感謝したい。

三日目の予定は夕刻に行われるオープニングセレモニー(開会式)と抽選会である。知っての通り、我々がIEF2010に参加した10月の後半は尖閣諸島問題を契機に中国の様々な場所で反日デモが行われており、大会の開催地となった武漢でも我々が到着する数日前に大規模なデモが行われたばかりであったため、日本代表はあまり外出しないよう通達された。そのため観光どころかまともに街を歩く事すらできなかったので部屋で張氏に頼んで購入してきてもらったトランプを使ってポーカーなどを楽しみつつ時間を潰した。夕刻になり日本代表を含めた全選手はバスに乗り込んでオープニングセレモニーのために会場となっている地元の大学の体育館へと向かった。ホテルから会場まではバスで凡そ30分前後といったところだ。会場に到着すると数千人近い人々が会場の前で警備員になだれ込まないように制止されながら何かを待っているようだった。当然中国のe-sportsがそれなりに発展しているのは知っていたが、ここまでの人気を博している事は腑に落ちず、張氏に尋ねたところこのオープニングセレモニーには日本でいう浜崎歩のような国内全土で高い知名度を誇る歌手が多く参加するので多くの人が詰め掛けているそうだ。しかし残念ながらボランティアの時と同様に、会場の規模的に何千人も収容することはできないため大学の成績順に入場を許されるそうだ。中は外から見る以上に広く、その広さは日本女子バレーの世界選手権が行われているような体育館の1.5倍から2倍前後の規模で、最大収容人数は800人から1000人といったところだった。オープニングセレモニーはまずIEF2010の運営にあたる責任者達、つまり中韓の政治家や役人の前説から始まり、続いて各国の代表者一名が自国の国旗を掲げてステージへ上って選手宣誓が行われた。後半になると恐らく中国では相当有名と思われる歌手が次々と登場し自前の曲を披露した。その様はとても華やかで、まるでミュージックステーションの収録を見ているようだった。歌詞が中国語なので何を言っているのかはさっぱりわからなかったが、J-POPとなんら変わりない中高生が好みそうな曲が大半であった。私の興味をひく歌手はほとんど現れなかったが一人だけとても綺麗で澄んだ歌声を持った歌唱力の高い歌手がいて、英語で歌っている歌があれば是非CDを購入したいという感想を抱いた。オープニングセレモニーは2時間ほどで終了し、その後各国の代表者たちは抽選会へと向かった。抽選の結果、我々の相手は皮肉にも開催国の代表であるTylooとTyloo.rawに決まった。私はアジア三強の内の二つと同じグループになり、その上彼らのホームで戦うことになるとはツキに見放されたなと自虐気味に笑った。一見e-sportsにはホーム・アウェイの概念がないように思えるがそれは過ちだ。過去のあらゆる世界大会の結果を隈なく調査すればその概念がe-sportsにも確かに存在していることは明白の事実であると認識できるだろう。

四日目の予定は予選リーグの試合であるTyloo戦およびTyloo.raw戦を消化することである。7時に起床、9時には会場入りし、自分たちの試合の番が来るのを先に試合を行っていた韓国代表であるWeMade FOXの戦いぶりを観戦しながら待った。初戦の相手Tyloo.rawは中国二強の一角であり、またアジアトップ3(中国のTyloo, Tyloo.raw, 韓国のWeMade FOX)だ。私が4dNの頃(今から4~5年ほど前)に注目していたプレイヤーであり、また中国のベストプレイヤーとして知られるAlexの弟子であるSavageがいたのでとても楽しみな一戦だった。中国のCSスタイルはとにかく奇抜である。日本の多くのプレイヤーにとっては欧州、特にCS大国といわれるスウェーデンの模倣が基本となるのでかなり戦いづらい。欧米のトッププロプレイヤーの多くも中韓の作戦や動きは読みづらいと評しているだけあってアマチュアである我々にとって実力差も相まって厳しい戦いとなった。対戦マップはinferno、我々は攻め側であるTスタートとなった。対戦に使用されたマップinfernoは実力差がある程度開くと守備側が最もプッシュしやすいマップである。Tyloo.rawは守備側のCTでありながら我々に対して猛烈なプッシュをしてきた。日本がCS弱小国であることを知っている彼らは自分たちと我々日本代表とのレベル差を考慮して上で早々にプッシュで潰しにきたのだろう。日本でトップに位置する我々にとってそのような圧倒的な実力を有するプロによる強引なプッシュは初体験であり、試合中はそのプッシュの対策の事しか頭になかった。6-9で前半を折り返し、後半はそのまま実力差をひっくり返すことができずに9-16で敗退した。次戦の相手は先ほどの相手であるTyloo.rawとは別チームだが、同じ組織に所属しており中国二強の一角であるTylooだ。初戦と同様にマップはinferno、Tスタート。試合は初戦以上に凄惨なものとなり、いわゆるCSの全世界共通用語「レイプ」(片方のチームがもう片方のチームを一方的に蹂躙する試合のことを指す)であった。スコアだけ見れば9-16と一方的と評するには無理があるラウンド奪取数だが、内容はナメプレイの連続で散々なものだ。このナメプレイに対しては様々な意見が日本国内のCSコミュニティーでは飛び交ったがナメプレイの対象となった私は、無論気分がいいものではないが、特になんとも思っていない。e-sportsが今後発展していくために最も重視しなければならないのは観客にとってのエンターテイメント性だ。自国や自分にとってファンであるチームがあのようなやられ方をすれば憤りを感じるかもしれないが、逆に自国や自分にとってファンであるチームが執行する側であるのならそれを楽しむ者も多くいるだろう。マナーにうるさいプレイヤーが多い日本では理解し難く、紳士的とはとても言いがたいが、一種のエンターテイメント性に対するアプローチの形であるというのが私見である。この考えは世界大会やプロ同士の試合の領域での話しであり、国内の練習試合やアマチュアの大会などに対してではないのであしからず。話が逸れてしまったが、Tylooの強さはまたTyloo.rawとは違った。Tyloo.rawはほとんどAIM勝負で挑んできたが、Tylooの方は素晴らしいグレネードの連携で撃ち合う際、そのほとんどが半白(FBの効果が薄れ辛うじて敵を視認できる状態)かブラインド(真っ白で何も見えない状態)だった。Tyloo.rawとは違ってAIM勝負すらさせてもらえない強さだった。予選敗退という結果に終わったが、私にとって5年ぶりの世界大会となる今大会は今現在の自分および日本のレベルと世界のトップのレベル差がどの程度のものになっているのかを理解する上で良い経験になった。予選の2試合を終えた後は他国のプレイヤー、特にWeMade FOXやTylooのプレイヤーを後ろから観戦して少しでも彼らの技術を盗もうとした。18時過ぎにはようやく全競技の予選が終わりホテルに戻り、各自他国とプレイヤーと交流したりして夜を過ごした。

大会最終日となる五日目の予定は決勝戦および閉会式である。我々が会場に向かった頃は既にCSの決勝は終わっていたので、StarcraftとDotaの決勝戦を見ながら閉会式を待った。オープニングセレモニー同様に責任者達の前説からはじまり、表彰式を終えて閉幕となった。ホテルに戻り、最後の夜の晩餐を済ました後はメンバー全員で今後の活動について4時間前後話し合った。日本ではLANでプレイヤー同士が顔をあわせる機会は中々ない。4-5年前、日本国内でも年に数度世界大会の日本予選が開かれていた頃は少ないもののプレイヤー同士が顔をあわせる機会があった。しかし今現在そういったイベントは開かれても年に1度あるかどうかといったところ。TeamSpeakなどの外部ボイスツールなどのおかげで簡易的に言葉を介してプレイヤー同士が意思の疎通を行っているが、それでは対面して話し合うことができず、また多くの時間をリアルで共有することで生まれる信頼関係というものは育めない。特にRTSやスポーツ系のFPSと違ってチームプレイを必要とするCSではそういった信頼関係やコミュニケーション力は不可欠だ。一時的な4-5時間程度の会議では今までの大きな問題を整理および解決することしかできず、これから降りかかってくるであろう問題の対策などまでは話し合うことできなかった。LANの重要性を強く再認識した。その後はボランティアの中でも日本代表の面々が特にお世話になった方々と交流した。前述した張氏との談話もこの時に行った。勉学に勤しむ中国人の大学生と歴史認識や中国政府の内政の話など興味が尽きない話題で会話は盛り上がりとても良い経験になった。流石に200名のボランティアのリーダーなだけあって博識で、言語という障壁のために話が中々前に進まなかったのが残念でならない。

今回IEF2010に参加させて頂く上でお世話になった松井氏、陳氏、張氏をはじめとしたボランティアの方々、応援してくださった皆様に心から感謝したい。我々はIEF2010で得た経験を生かして次のステップに繋げなければならない。4dNが解散した後の日本の代表チームは解散に次ぐ解散でまともにチームとして機能していない。それでは個人単位ではなくチーム単位で世界という舞台で得た経験を生かすことはできない。我々にとって今後のチームとしての課題や目標を定める上でかけがえの無い大会であったといえる。

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