IEF2010レポート  尾崎 大悟(Warcraft3部門 ゲームネーム nemuke)  International E-sports/entertainment Festival 2010に参加して


■International E-sports/entertainment Festival 2010に参加して

尾崎 大悟(Warcraft3部門 ゲームネーム nemuke)

 

私は2008年にWCGドイツ・ケルン大会、2009年に同IEFの韓国・水原大会に出場しており、国際大会には3度目の出場となります。

まず、今回の渡航スケジュールは下記の通りです。

——IEF渡航スケジュール——

[10月26日]北京到着

日本出発-北京到着

[10月27日]武漢到着

北京到着-武漢到着-ホテルチェックイン

[10月28日]IEF初日

開幕式-抽選会

[10月29日]試合日

予選会-準決勝

[10月30日]最終日

決勝戦-閉幕式

[10月31日]帰国

北京出発-武漢出発-日本到着

————

以下、主に試合内容と、現地中国の印象の2点についてレポートさせていただきます。

 

試合内容

10月29日の試合当日、会場には午前9時頃に着き、控え室で予選会場の準備を待っていました。抽選会は28日の夜に行われていましたが、何かトラブルがあったようでWarcraft3の組合せは決まっていませんでした。

予選会は午前10時頃から始まりました。Warcraft3の予選会会場はまるで控え室のような、小さな部屋でしたが、1人1台のPCが与えられており移動・設定し直しの必要が無いこと、隣から覗けないように対戦の組合せが隣り合う配置になっていないことから、非常に配慮されていたと思います。過去2回の海外経験でも、場所や機材の不足により1人1台のPCが与えられて期間中ずっと使えるということはありませんでした。

 

セッティング時間は約15分ありました。デバイス等は5分もあれば接続できるので、約10分の時間をゲームのテストに当てることができます。

しかし今回はセッティングに関して、非常に痛いミスをしてしまいました。Warcraft3にはキーボードを自分用に設定したテキストファイルがあるのですが、そのテキストファイルを入れたUSBメモリをホテルに置き忘れてしまったのです。国際大会の舞台にもかかわらずこのような初歩的なミスを犯してしまったのは大変不甲斐なく思います。USBメモリを忘れたことに気付いたのは会場に向かう選手バスの中でした。幸いテキストファイルの設定方法は覚えていたので、バスの中で最低限必要なキー設定を確認し、残りのセッティング時間に復旧を急いだのですが、第1試合の開始には間に合わず、万全ではない状態でプレイすることになりました。

 

予選グループ、試合形式

予選形式はBO1の総当り戦で、私はVorShiX選手(ドイツ)、Fly100%選手(中国)、Nicker選手(ロシア)と同じ組合せになりました。マップの選択方法はお互いに一つずつ苦手なマップを消した後、残ったマップからコイントスで決めるという方法でした。

 

第1試合 nemukeOrcvsVorShiX選手(Night ElfTerenas Stand

第1試合はドイツのVorShiX選手との試合でした。お互いにLaboのクリーピングから始まるこのマップでは一般的なスタートでしたが、その後VorShiX選手の冷静な索敵とハラスでクリーピングを制限され、続く2ndHeroを雇用したハラスにおけるVorShiX選手の冷静な操作によってGrunt3体を失い、大きな差が生まれてしまいました。その後こちらもTier2のユニットを出したものの、カスタムキーの調整不足によりスキル選択とユニットの種類を間違えてしまい、チャンスが無いままNight Elfの強力なユニットであるタロンのアップグレードを許し、敗色濃厚に。相手の本陣を襲うことで挽回を図ったものの、冷静に対応されてゲーム投了となりました。

 

第2試合 nemukeOrcvsFly100%選手(OrcEcho Isles

第2試合は前年のIEF韓国・水原大会の優勝者であるFly100%選手とのOrc対決となりました。お互いに1stHeroにBMを出し、最初はお互いに近くオーガを狩ってレベル2とし、そこからFly100%選手がクリーピングしていたItemshopのジャックに成功しましたが、先にBootsとDustを買われていたことを考えずWWを必要以上に多く使ってしまうという判断ミスを犯しこちらのBMを倒されてしまいました。次に酒場でBMを復活させ、Fly100%選手のBMを倒すことには成功しましたが今度はFly100%選手に酒場でBMを復活され、再びこちらのBMを倒されてしまい、結果Heroのレベル差が大きくつくことになりました。その後の展開でFly100%選手のBMを倒すチャンスはあったものの反応が間に合わず、Heroのレベル差が絶望的となり投了となりました。

 

第3試合 nemukeOrcvsNicker選手(Night ElfEcho Isles

第3試合はロシアのNicker選手です。Nicker選手の出だしはこのマップのスタンダードの一つでMercenaryのAoWのクリーピングでしたが、自分の索敵と判断ミスによりNicker選手のクリーピングに気付かずHeroのレベルに差がつきました。その後Tier2のハラスがきましたがNicker選手のすばらしい操作でユニットに被害を与えられないまま、Tier2の建設を大幅に遅らされ、ようやくユニットを揃えた頃にはタロンのアップグレードが完了しており挽回のチャンスも無くゲーム投了となりました。

 

感想

3戦を通した感想としては知識面に圧倒的な差があったという印象を受けました。操作の種類に関しても、反応速度や複数ユニットの高速操作といった身体面よりも、アイテムやスキルの使い方といった知識面でプロは充実していると思いました。

 

USBメモリを置き忘れてしまったことに関して、これは私の実力不足が表れた形だと考えています。USBメモリを置き忘れたときに備えて複数のUSBメモリを用意しておくといったリスク管理ができていませんでしたし、復旧作業にも焦って効率を落としてしまったこと、審判に対して時間交渉がうまくできなかったこともありました。

 

IEFで出会ったプロゲーマーの印象として、記憶に残っているのはプロゲーマー達全員が国際大会の舞台にもかかわらず、非常に楽しんでプレイしていたように見えたことでした。一般社会よりも厳しいプロの世界で選手寿命が30歳と言われる中、世界的にもまだまだゲームに対する否定的な考えが多いのにもかかわらず、楽しみながらゲームをプレイしている姿には非常に力強さを感じました。

過去2回の経験では強く感じなかったのですが、今回私は各選手の表舞台だけではなく背景も見なければならないと思うと同時に、そういった姿勢をこれから勉強していなければならないと感じました。

 

試合が終わってからは、昼休みに配られたマックを食べてCSの日本代表チームの試合を観戦し、それが終わるとWarcraft3の準決勝までの試合をずっと選手の後ろで観戦していました。Warcraft3の決勝トーナメントはステージ後方のプレイエリアで行われていて、一般人が立ち入るのは禁止されていたようですが、選手だった私は後ろから見ることができました。

高レベルのプレイを生で見るのは驚くほど勉強になり、面白いものでした。画面に映る状況で自分ならどう動くかを無意識に考えさせられる中で、自分よりも圧倒的に強いプロがプレイしていくということで、いわばテストの答え合わせを高速でやっているような感覚でした。

そういったゲーム画面だけの知識は配信やリプレイを見ても多少感じることはできますが、現地ではそれ以上に生の空気というものがありました。キーボードやマウスの使い方はもちろんのこと、特定の場面や試合が終わった時の選手の仕草から精神面も感じ取れましたし、試合後すぐさまリプレイを4~8倍速の高速で観て自分の中で何かけじめをつけていることもわかりました。以上のことから私の推測に過ぎませんが、E-sportsが強い国は生でプレイを観られる環境が充実しているのもその一因ではないかと思います。

 

現地の雰囲気について

ここからIEFの様子や現地中国で感じたことについてレポートさせていただきます。

 

●IEFの運営体制について

10月27日、武漢空港に着くとIEFJapanの陳さんと、現地ボランティアスタッフの方々による出迎えがありました。今回驚いたのが各国代表選手達のバックアップ体制として地元大学生のボランティアスタッフの方々が多数動員されていたことです。明確な数はわかりませんが、全部で300人ぐらい動員されていたと聞きました。過去2回の海外経験と比較しても、ここまで大人数のスタッフが動員されていることはなかったので、何としてでもイベントを成功させるという中国政府の強い意志を感じました。学生をイベントのボランティアスタッフとして動員するのは中国ではよくある光景のようです。ボランティアに参加したことが社会に出たときに実績として評価される仕組みがあり、先日まで開催されていた広州のアジア大会2010でも、学生ボランティアらしき姿を確認することができます。

 

武漢の空港からは1時間ほどかけてホテルに向かいました。期間中、ホテルは選手村のようになっていて、開催地の中国を含むすべての選手が宿泊してました。ちなみに一般の宿泊客らしき人達もいました。

ホテルは10階建てくらいで、日本代表団の部屋は7階でした。今回食事はすべて無料で、朝は1階でバイキング制の朝食があり、昼と夜は4階のラウンドテーブルで中華料理が出されました。

 

10月28日には開幕式があり、IEFの会場はホテルから選手バスで10分ほどの距離です。 開幕式は中国語と韓国語の両方でスピーチが行われ、選手入場の後、マリオやナルト等に扮したコスプレイヤーや、中国・韓国の有名歌手が多数出演し踊りや歌を披露していました。それにしてもこの開幕式は観客がものすごく多く、2階建ての会場の観客席を埋め尽くすほどで、中国の勢いを感じました。

 

現地の雰囲気について

今回、国際交流についてですが、これまで2回の海外経験では尻込みしてしまい殆ど交流できなかったので、今回は自分なりに積極的にコミュニケーションを取るようにしました。そのために覚えておいて役に立ったのが「相手の国の言葉を聞く」ことでした。話題作りの一環なのですが、相手の国に関心を持つことはやはり好意的に受け取られるようです。実際、私も日本語について聞かれたときは日本人であることを実感して、非常に嬉しく思いました。日本と中国は共通する漢字が多いので、自分の本名の中国語発音を教えてもらうといったこともできました。

私の英語力は中学生程度で、洋楽の歌詞を5曲ぐらい覚えている程度のレベルです。しょっちゅう相手の発音がわからなくなり、その都度耳を傾けて、あるいは辞書や筆記を使用して意味を教えてもらう、という非常にスローなコミュニケーションでしたが、言葉が分からないことについて嫌な顔をされるといったことは一度も無かったと思います。過去2回の海外経験でも感じましたが、この手の国際交流イベントでは「言葉が通じなくて当たり前」という価値観が前提としてあるようです。

 

空いた時間にボランティアスタッフの方々にお話を伺ったのですが、主に中国でPCゲームをプレイしている層は、趣味に回せる時間が多い高校~大学入学の男子学生のようです。一方で女性の方は殆どゲームをプレイせず、「ゲームは男性のもの」という常識があるようでした。実際に女性ボランティアスタッフの方にもお話を伺ったのですが、ゲームにはそれほど関心が無いようで、IEFの競技種目についても「どんなゲームなのかわからない」という返事が帰ってきました。

 

ボランティアスタッフの方々が大会のゲームを表現するときに「E-sports」ではなく「Computer Game」または「Game」「Competiton(競技)」という言葉を自然に使っていたことも興味深く思いました。裏付けの無い個人的な印象に過ぎませんが、E-sportsが政治主導で行われてる中国においては、「E-sports」という言葉はあくまでゲームの競技大会を形容するための言葉として存在していたように思います。

 

最終日の様子について

10月30日には決勝戦と開幕式がありました。午前から始まった決勝戦はすべて会場の大スクリーンで中国の実況解説を交えつつ、Counter-Strike、Warcraft3、Starcraft、DOTAの順に行われました。

その中でWarcraft3の決勝戦はFly100%選手(Orc)とInfi選手(Human)の対決となり、奇しくも前回のIEF2009韓国・水原大会の決勝戦と同じ組合せになりました。なお、前回はFly100%選手が勝利しています。1戦目のMelting Valleyはお互いに陣地を拡張しあうロングゲームとなりましたが、Fly100%選手のすばらしい戦闘操作に対し陣地の拡張速度で勝ったInfi選手が勝利しました。2戦目のEcho IslesはInfi選手のラッシュをFly100%選手が冷静に返し1-1とスコアを戻しました。最終戦はTwisted Meadowで、一見奇策にも思えたInfi選手のTowerRushが決まり、それに対して陣地を再構築するというFly100%選手の驚異的な粘りもありましたが、最終的には冷静に陣地を拡張していたInfi選手が勝利しました。

 

すべての決勝戦を終えると閉幕式に移り、開幕式と同様有名な中国・韓国歌手や雑技団の方々が歌や演技を披露しました。

その後表彰式がありましたが、ここで驚いたのは選手だけではなく活躍したボランティアスタッフの方々の表彰式があったことでした。難しいスケジュールの中、サポートしてくださったボランティアスタッフの方々も、いわば大会競技者の1人だと思います。日本代表団専属のボランティアスタッフの方も表彰され、個人的にも嬉しく思いました。

 

会場を離れると別のホテルにてフェアウェルパーティーがあり、ラウンドテーブルで会食し、解散となりました。

その日の夜はVae VictisのメンバーやENZAさんと集まって今後の話し合いを行った後、10月31日の朝8時にホテルを出発し、日本への帰国の途に就きました。

 

間接的な敗因分析

最後に、試合等の直接的な敗因分析とは別の部分で、自分の何が問題だったのか、間接的な敗因を振り返ってみたいと思います。主な要因は以下の3点だと考えています。

 

1.海外生活や対人等の経験の浅さ

2.ポジティブに思考する技術の不足

3.効率的な勉強術の不足

 

1に関して、3度目の海外で慣れてきてはいましたが、旅とプレッシャーの負担が大きく、ホテルの夜にリラックスして試合に向けて構想を練るべきところを、イメージができないほど疲れてしまったことがありました。外国の、それも世界各国から代表選手が集まる大会では日頃の経験の浅さが負担として表れてしまったのではないかと思います。

 

2に関して、これは昔から自分自身でも感じており、おそらくプロゲーマーと決定的に差がある部分だと思っています。試合中の経験もありますが、一番わかりやすい形で表れたのがUSBメモリを忘れた時の自分の対応の仕方で、大きな失敗をしてしまったという否定的な見方をしてしまいましたが、別の見方をすれば致命的なミスをした状態でどう振舞うか、という貴重な機会だと思います。精神的に強いプレイヤーなら復旧に努めつつもその状況を楽しむことができたのではないかと思います。

 

3に関して、ゲームの知識面など自分はどうすれば効率的に知識を吸収できるのかよくわかっていない部分がありました。プロゲーマーの特徴の一つとしても、現にWarcraft3からStarcraft2に転向したプレイヤーが、覚えることが大量にあるにもかかわらず瞬く間にトップクラスのプレイヤーとなっていることからも、多くのプロゲーマーは単なる知識の量だけでなく吸収する速度も早いことが伺えます。そういったプロゲーマー達を生で見たことでなおさら、効率的に知識を吸収していく術を身に付ける必要があると強く感じました。

以上で私のIEF2010参加レポートとさせていただきます。

 

今回は予選全敗という結果に終わってしまいましたが、日本にいては全く経験できないことを経験でき、レポートの執筆も含めて大変貴重な勉強の機会となりました。この経験を糧にして今後の活動に繋げていきたいと思います。

貴重な機会を与えていただいたIEF様、ボランティアスタッフの方々、IEF日本代表の陳龍様、チームリーダーの松井悠様、デバイスを提供してくださったZOWIE GEAR様と株式会社マスタードシード様、そして応援してくださった皆様、ありがとうございました。

 

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3件のコメント

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  3. [IEF2010]IEF感想Day4 « Iefjapan

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